
台湾の漢方文化を日本にも。
ーーDAYLILYは北海道出身の小林百絵さんと、台湾出身の王怡婷さんが2017年にオープンした漢方のライフスタイルブランド。お二人はどのようなきっかけでDAYLILYの活動を始められたのでしょうか。
小林 |
台湾からの留学で日本に来ていた王とは、同じ大学院のデザイン思考のゼミで出会いました。その頃彼女が「漢方と女性」をテーマにした修士論文を書いていたのをきっかけに、台湾人のライフスタイルや漢方のとり入れ方を知り、日本との違いにとても驚いたんです。彼女の両親は台湾で薬局を営んでいたというルーツも。私は一足早く大学院を卒業し、広告代理店での就職後も当時の衝撃を忘れられずにいました。そこで同じく広告代理店での就職が決まっていた彼女に連絡を取り、「一緒にブランドを作らないか」と提案したのが始まりです。 |
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王 |
台湾は風邪気味や生理中の血液不足などちょっとした時にスープやお茶で漢方を手軽に取り入れられる環境が整っています。西洋医学の対処療法的な考え方と違って、台湾では日々の食事から心身を整えるのが当たり前。日本に住み始めてから、そのギャップをより強く感じるようになりましたね。 |
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小林 |
王が日本はもちろん台湾にさえ若い女性が手に取りやすいパッケージの漢方がないと感じていたのをきっかけに、クラウドファンディングで集めた資金でDAYLILY1号店を台湾にオープンしました。日本のみの実施だったので、支援してくださった方々は台湾に行かないと商品が買えない。そんな状況でも、漢方を通して日本と台湾を繋ぎたいという私たちの思いに共感してくださった多くの方々が応援してくださったんです。
しかしすぐに日本からの観光客が来てくれた訳ではなく、全くお客様が来ない日々も続きました。台湾には既にたくさんの漢方ブランドがある中で、0の状態から認知を広めるのは難しいこと。そんな中現地に日本から駐在している方や観光コーディネーターの紹介などをきっかけに、ガイドブックに紹介していただいたり、台湾のお土産としてDAYLILYが浸透していくようになりました。 |
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ーーDAYLILYを立ち上げた際に、前職である広告代理店での経験が活かされたことはありましたか。
小林 |
代理店時代は広告の仕事ではなくクライアントさんの新規事業の立ち上げをお手伝いする部署に所属していたので、ブランドの立ち上げの部分では勉強になった箇所が多々。しかし同じ新規事業でも、大企業と個人では使える資金や使えるリソースが全く違うと感じることもありました。
大企業にいた頃はクライアントの求めるものを作るのが第1条件でした。しかし起業してからは、本当に自分たちが欲しい商品を作るのに対していかにブレずに進めていくかが大事だと思います。そこが仕事の仕方として変わった点でもありますね。 |
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ブランドの拡大のため、より漢方に関心がない人にも受け入れられる商品開発。
ーーDAYLILYが抱える現状の課題は何でしょう。
王 |
DAYLILY設立当初は自分達が欲しいと思うものを作りたいという気持ちが強かったです。しかし台湾で漢方文化が浸透しているように、一部の層だけでなく幅広い地域や年齢層の人にDAYLILYを届けたいというのが私たちの考え。漢方にハードルを感じている、美味しくないという印象を持つ方はまだまだ多くいます。そうした方々のネガティブなイメージを払拭し、私たちの思いを届けるための活動は今後の課題ですね。 |
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小林 |
多くの人にDAYLILYを届けるために、私たち自身のライフスタイルをSNSで発信するようにしています。InstagramやYouTube、オウンドメディアを通して、より日常に寄り添った取り入れ方を発信することで、漢方をより身近に感じていただけるとうれしいです。日本人がほぼ毎日お茶やコーヒーを飲むように、自然と漢方に触れられるような商品開発を目指しています。 |
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ーー漢方だけでなく、火鍋などの食品やライフスタイルアイテムなども展開するDAYLILYですが、新たな取り組みを始める上で大切にしていることはありますか。
小林 |
ヘルシーに気持ちよく生きるために日常に取り入れられるアイテムを作っていきたいと思っています。例えば私たちが販売するチャイナシューズは、布で作られているフラットシューズで1日履いて過ごすのにすごく楽なアイテム。日本でヒールを履く生活に慣れている人々に、こうした食べる・飲む以外の気持ちのいい過ごし方も知ってほしいですね。 |
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王 |
台湾では体を労って冷たいものを極力摂取しなかったり、生理前は動物の内臓を食べて力をつけるなど普段の食事から心身の健康を意識している人がほとんど。そうした知識は台湾では親から子へ当たり前に教えられています。日頃の習慣がヘルシーな生き方に繋がると日本の人々にも伝えていきたいです。 |
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小林 |
実際、現地へ足を運ぶ中で出会う台湾人はみんな無理なくヘルシーな暮らしをしていると感じます。DAYLILYは単なる漢方ブランドではなく、漢方のライフスタイルブランド。漢方を1つの切り口として、DAYLILYのユーザーがみんなで一緒に気持ちよく生きていけるといいなと思います。 |
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メンバーもユーザーも、同じ目線で。
ーー現在台湾に1、国内に6の店舗を展開しているDAYLILYは40人以上のメンバーで活動しています。チームを運営する中で大切にしていることはありますか。
小林 |
私たちはメンバーもお客様も「シスター」と呼んでいて、それは関わる全ての人が対等にDAYLILYを創り上げていきたいという思いから名付けました。しかし、人数が増えれば増えるほど上下関係が生まれやすくなるのも避けられない問題。 |
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王 |
もちろん全員が1つのチームですが、それぞれが独立して目標を達成できるようになれればと思っています。個人で季節限定のプロジェクトに取り組んでいる人もいますし、やりたいことがある人が積極的に動けるようになるのがチームの目標です。 |
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小林 |
その中でも心身ともにヘルシーであることは大事にしたい軸ですね。仕事を頑張りすぎて他のものを犠牲にして心身のバランスが取れないのはヘルシーではない。もちろん個々によって心身が1番気持ちいい状態は違いますし、私たちが決められるものでもありません。それぞれが自分に合ったスタイルを一緒に見つけていけるのが理想のチームのあり方ですね。 |
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ーーDAYLILYの今後の展望を教えてください。
王 |
様々な層の人に届けるのと、3年間コロナウイルスの関係で海外へいけない日々が続きましたが、やっと海外への出入りが解放されました。他のアジア圏や欧米諸国の人にもDAYLILYが届くよう活動したいですね。 |
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小林 |
ブランドを立ち上げた当初から、DAYLILYが世界の様々な場所で手の届く状態を作りたいとずっと思っていました。今年は世界各国へ行き来し、そのための活動に一層力を入れたいですね。 |
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写真:倉島水生
※コロナウイルス感染拡大防止対策を施したうえでインタビューを行い、撮影時のみマスクを外しております。
※コロナウイルス感染拡大防止対策を施したうえでインタビューを行い、撮影時のみマスクを外しております。