CIP 2022.07.21

モデルとイラストレーター。2つを選んだ自分の姿で、人々を後押ししたい。 ーファッションモデル・イラストレーター 清水こづえ

現在22歳の清水こづえさんの職業は、「ファッションモデル・イラストレーター」。広告やブランドでのモデル活動と、自身のイラストグッズの販売や個展開催など「両方で生計を立てたい」と語る清水さんの、兼業しているからこそ感じた思いについて迫った。

CIPとは

ファッション業界に携わり続けることで培った、Gravity独自のネットワークを強みとしたインフルエンサーサービス。Dear Andy.では、さまざまな分野で活躍する若手インフルエンサーに同年代の若手編集・ライターがインタビューをし、活動の仕組みや影響を与えているものなどをコスモならではの感度やセンスで紐解いていきます。

まずは行動。経験の中から自分が進みたい道を決める。

ーー清水さんがモデルとイラストレーターという2つの活動を始めた経緯を教えてください。

清水

 大学2年生のときに、モデルとイラストレーターという2つの活動を同時に始めました。そのころはまだ、大学を卒業してからも続けるかどうか迷っている状態。編集やアートディレクションなど裏方の仕事にも興味があり、色々なことに挑戦しながら自分の道を模索していました。私は興味を持ったら行動し、その経験を通して自分を知るタイプ。制作会社やアパレル、ホテルのブライダル、工場のシール貼り……など多種多様なアルバイトにチャレンジしていたんです。そうした経験の中から、今後も続けていきたい職業を探していました。

 大学4年生になり周囲の友達が就職活動をしていたころ、「自分が1番したいことは何だろう」と考えてモデルとイラストレーターの道に進む決断をしました。モデルならば作品、イラストレーターならば絵を通して、仕事の範囲内で自分をどれだけ表現できるかという点に惹かれたんです。この2つならば、血を吐くほど苦しいことやどんな理不尽があってもやり続けたいという気持ちでした。どちらも趣味ではなく職業として成立するように、金銭的なやり取りに関しても周囲の目上の人に相談して、イラストレーターとしてもグッズ販売や個展開催が行えるよう、地盤を整えていったという経緯です。みんなとは違う道だけど、これは自分なりの就職活動と捉えていました。

ーーさまざまな挑戦の中からモデルとイラストレーターという2つの道を選んだのですね。どちらか1本の道に絞る選択肢はなかったのですか。

清水

 なかったですね。逆に言うと、最初からイラストレーター1本で自分を売るのは自信がありませんでした。まずは、私のイラストを見てもらうために、「モデル・清水こづえ」という入り口を作ろうと。兼業と言うと、50%50%で分けているように聞こえますが、私は両方に100%力を注いでいます。どちらの活動も本気であることをもっと見せていきたいです。

 両方の活動についてもっと広く知ってもらうために、私が被写体となった写真に、私自身がイラストをペイントする作品作りをしています。2つの活動を通して1つの作品が完成するので、伝える手段としてはぴったりかなと。写真とイラストを掛け合わせることで、モデルとしての自分はどういう風に写っているのか、イラストレーターの自分はビジュアルとしてどう見えるのかを再認識できますね。

イラストは負の感情を放出する場。

ーー清水さんがイラストを描き始めたきっかけは何だったのでしょう。

清水

 3歳でクラシックバレエを始め、中学を卒業するまで続けていました。幼い頃からバレリーナになるのが夢で、周囲にも言い続けていた私は、続けていればいつかプロになれると信じていましたが、バレエは選手生命が短く、中学生の時点で世界大会に出場しないと活躍できないような厳しい世界。高校受験でバレエと遠ざかった生活をおくり、冷静に自分を見つめ直したときに、私はバレリーナとして生きるのが難しいと気付きました。そこで、ずっと続けるつもりだったバレエを辞めて、どうしていいか分からなくなったんです。そこから自分に自信がなくなって……。

 そんなときに、父が真っ白なノートを私にくれました。「これ、すごい良いノートだから」と渡されたノートに絵や言葉を描き始めると、悶々としていた気持ちが消化されたんです。描いていく中で気持ちが楽になり、「何をしていいか分からない」から、「何かやってみよう」と思いが切り替わりました。バレエをやめるという挫折が、イラストを描くきっかけとなったんです。

ーーノートにはどのようなことを描いているのですか?

清水

 日常生活での感情をそのまま描いています。特に言われて嫌だったこととか、苦しい体験など負の感情をイラストに落とし込んでいるんです。マイナスな気持ちを口にするのは、勇気がいるし、現実では言葉を選んでしまうことが多い。しかし、絵だったら、本人がどういう思いで描いたのか直接的に分からないので、そこに全て放出しています。バレリーナの夢を諦めて挫折したときから、自分に自信がなくなり、感情を表に出すのが苦手になりましたが、絵だったら自分の気持ちに自信を持って表現できるので、高校時代からこのノートにイラストを描き続けています。

「自分にもできるかも」と、行動のきっかけになって欲しい。

ーーイラストを通して人々にどのようなことを伝えたいですか。

清水

 私のイラストを通して、「自分も何かできそう」と行動の源になって欲しいと思っています。今、私を応援してくれている多くは、私と同年代で同じような境遇の人。「自分も色々挑戦してみたいけれど、きっかけが分からない」、「モデルのような自己表現をする仕事がしたいけれど取っ掛かりが掴めない」という方に対して、さまざまなことに挑戦してみて、どんな道を選んでもいいと伝えたいです。

 実際に去年開いた個展では、そうした進路に関係する悩みを抱えている人がたくさん来てくれて、私に悩みを相談してくれました。私のイラストを見たり、話すことで「こづえちゃんみたいに、私も何か挑戦してみます」と言ってくれる方も多くて。私自身も就活のタイミングで、モデルかイラストレーターの1つを選ばなければいけないと悩んでいました。しかし、結果としてモデルとイラストレーターの2つを選ぶという、周りとは異なる選択が正解だった。当時の自分と同じような悩みを持つ方の気持ちを前向きに変えられるのはモチベーションですね。

去年開かれた個展「Room No.52」の様子。

ーー行動を通して自分を知り、世界を切り開いてきた清水さんだからこその発信ですね。

清水

 興味を持った方向に動き、様々な世界を知りたいというのはモデルの仕事にも通ずる部分があります。例えば、必要枚数を撮り終わった撮影でも、時間が許す限りより良い作品を作ろうとする人が集まるのがこの業界。カメラマンやスタイリスト、ヘアメイクなど自分の芯をしっかり持ち、それを伝えてくれる人と出会うことで、自分にはない新しい発想に触れられるのがやりがいですね。

 しかし、行動が間違いを生む場合もあると最近気がつきました。例えば、仕事でSDGsの講座を受け、興味を持ち始めたとき。周りの友達が「SDGsについて就活や授業などで話題にあがるけれど、よく分かっていない」と言っていたので、イラストに落とし込んで分かりやすく伝えようと、noteに書いて発信していました。その中で、「いらなくなった服を海外の貧困地域に送ることで、貧困の連鎖を止め、SDGsに繋がる」と発信していたのですが、実際にはそうでないケースもあると知ったんです。そのときにSNSを通して何でも容易にシェアできる時代だからこそ、自分の言動に慎重になる必要を感じました。

ーーモデルも、イラストレーターも全力で取り組み続ける清水さんが、今後やってみたいことはありますか。

清水

 

 モデルとイラストレーターの両方を通して、見ている人が「自分も何かやってみよう」と考える原動力を作りたい気持ちはそのままです。それは、私を真似して欲しいというよりも、「そういう考えや行動の仕方もあるんだ」と、1度立ち止まって自分を見つめるきっかけになってほしいと思っています。そうしたメッセージを伝えられるような場や発信できる作品を今後作っていきたいですね。

写真:倉島水生

※コロナウイルス感染拡大防止対策を施したうえでインタビューを行い、撮影時のみマスクを外しております。