CIPとは ファッション業界に携わり続けることで培った、Gravity独自のネットワークを強みとしたインフルエンサーサービス。Dear Andy.では、さまざまな分野で活躍する若手インフルエンサーに同年代の若手編集・ライターがインタビューをし、活動の仕組みや影響を与えているものなどをGravityならではの感度やセンスで紐解いていきます。 |

アパレルバイトでの経験から知った、服の大量廃棄問題。
ーーcarutenaの活動を始めたきっかけを教えてください。
樋口 |
2020年の4月、大学3年生のときに学生団体「carutena」を創設しました。きっかけは大学に入学した頃からアルバイトをしていたアパレルショップで、倉庫に送っていた売れ残り商品が大量廃棄されていると知ったことです。自分の行動が環境破壊に繋がっていたのが衝撃でした。大学でファッションに関する国際環境について専攻する共同代表の野中にその話をする中で、2人でファッションを通して環境問題に何かアプローチできないかと、carutenaを設立したんです。 |
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ーーcarutenaを創業した時は周囲からどんな反応がありましたか。
樋口 |
不要な服を回収して、そのまま海外に送るアパレルのリユース活動は多いですが、回収した服を違う形にリメイクすることに新鮮な反応を多くいただきました。そこがファッションの環境問題に取り組む他の団体とは違う、carutenaらしさの1つかなと。 ただ古着をリメイクした商品を作るのではなく、消費者需要や社会の流れをキャッチするのは、carutenaのこだわりです。しかし、消費者需要はトレンドにも繋ること。いっときのブームだけで商品作りをしてもすぐに捨てられてしまうので、需要の中で長く使用してもらえる商品作りを常に意識しています。 |
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商品作りの分析から、持続的な活動へと繋げる。
ーー樋口さんと野中さんの2人から始まったcarutenaは、現在30人のチームで活動しています。チームを拡大する中でハードルはありましたか。
樋口 |
設立から8ヶ月でPOP UPイベントを開催したのですが、売上が1500円しかなくて……。ECでの売上も好調で、大学内での認知度も上がっていたときだったので、とてもショックでした。 そこで野中と話し合い、商品と組織の2つに問題があると考えました。それまでは直感的なビジュアルの可愛さを優先して商品作りをしていたのですが、それでは社会の動向や消費者の需要が掴めない。そこで200人の消費者にアンケートを取り、人々がどんな商品を求めているのか分析したんです。「どんな商品が欲しいですか」や「carutenaの商品を見てどう感じますか」などの質問をし、ビジュアルや実用性についてなど様々な回答をいただきました。そこから、「トートバッグの裏地は汚れやすいから黒にする」や「あえて古着のニュアンスを残した方がcarutenaの活動を発信しやすいのではないか」など、自分達だけでは生まれなかったアイディアに結びつきましたね。
組織について振り返ると、それまでチームの中で問題があっても私と野中の2人だけで解決しようとしていたことに気がつきました。何をして良いのか分からないメンバーは手持ち無沙汰になってしまい、モチベーションも下がっていた。サステナブルに団体を続けていくためにはメンバーを育てていく必要性を感じ、carutenaを通してどんなことがしたいかメンバー1人ひとりにヒアリングをし、組織を分業化したんです。
分業化してからは、アンケートの回答者や今までの購入者に多かった20代の女性をターゲットとし、販売課が設定したコレクションから開発課がデザインを決め、それに対して私がフィードバックするという商品販売までのプロセスを構築しました。私がなるべく部署ごとのミーティングに参加し、メンバーには「なぜ今その商品を販売しようとするのか」を徹底的に分析してもらっています。 その後行った2回目のPOP UPでは売上が初回の20倍に。消費税が10%に引き上がるタイミングで販売したエコバッグはほぼ完売するなど、消費者分析が結果に繋がりましたね。自分達の役割を明確にしたことで、メンバーがより自発的に動くようになったのも肌で感じた変化です。メンバーからも、「2人についてきて良かった」、「carutenaに誇りを感じた」とポジティブな反応があり、売上向上は活動全体のやりがいにも結びつきました。メンバーが楽しいと思ってくれることは、団体の継続に結びつきますし、こうした分析を今後も大切にしていきたいですね。
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ーー商品と組織の改善が売上とチームの両方に良い変化をもたらしたのですね。carutenaの活動を通して、樋口さん自身に変化はありましたか。
樋口 |
服の大量廃棄問題について知るまでは、アルバイトで稼いだお金を使ってとにかく自分が好きな服をたくさん買う生活を送っていました。元々ファストファッションも好きでしたし、今でも購入することがあります。しかし服を買う前に必ず「その服を5年間以上着る意志があるか」考えるのと、日をあけて7回見てそれでも欲しかったら購入するように購買意識を変化させました。それは自分ができる範囲の中で、サステナブルにファッションを楽しむために意識しているポイントですね。 |
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ーー現在30人が在籍しているチームは、どのように拡大して行ったのでしょうか。
樋口
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SNSでの募集や友人の紹介での応募から面接をし、チームを広げています。内向的な人が多い部署にはリーダーシップのある人材が必要など、部署ごとに必要な人材をリストアップし、その中から採用しているんです。 私は3月に大学を卒業してしまうので、次の世代に代替わりをしなければならない。私からは現在の採用や活動にはなるべく干渉せず、サステナブルに活動を継続できるような環境を、次の代表とそのメンバーで築き上げています。 |
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広げたいのは、「服を捨てない」という価値観。
ーーcarutenaはECサイトやPOP UPでの商品販売だけでなく、出張授業や講演会での啓発活動も行っています。活動を通して伝えたいことは何ですか。
樋口 |
「服を捨てない」という価値観です。carutenaの商品を買うだけで環境問題が解決される訳ではないですが、「服を捨てない」選択肢は伝えられると思っていて、そのうちの1つがcarutenaであって欲しい。啓発活動では、世界中でどれだけの服が捨てられているかや過酷な労働環境などを伝えていて、参加者からは「知らなかった」という声をいただくことが多いです。少しでも環境問題について興味を持ってもらい、「服を捨てない」行動に移してもらいたいと考えています。 |
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ーー樋口さん自身は来年の春にcarutenaを引退されるということですが、これから団体がどのように成長していってほしいと思いますか。
樋口 |
10年後には海外進出するまで成長して欲しいと考えています。実は以前に、カンボジアの方から製品づくりを一緒に行わないかとお声がけもいただいたのですが、そのときはコロナ禍と資金不足を理由に諦めてしまいました。今後、途上国の人々に製品を制作してもらい、輸入したものを販売することで廃棄問題について消費者が考えるきっかけを与えられたらと。そのためにも日本全国に支部を広げて、活動の幅を増やしていきたいですね。 |
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写真:倉島水生
※コロナウイルス感染拡大防止対策を施したうえでインタビューを行い、撮影時のみマスクを外しております。