TREND 2022.04.05

「ブランディングデザインとは?」ブランド構築に欠かせない手法のポイント・成功事例

「ブランディングデザイン」とは、自社商品やサービスに関する情報を視覚化して、「デザイン」の形で消費者に伝える活動を指します。企業やブランドの認知度や集客力を高めるためには、適切なブランディング活動が欠かせません。 自社のアイデンティティや企業理念、コンセプトなどをブランディングデザインへ正確に落とし込むことにより、ユーザーに効果的なブランドイメージを持たせることができます。 本記事では、ブランディングイメージの概要や正しく行う手順について解説したうえで、有名な成功事例を紹介します。この記事を読むことで、ブランディングデザインに関する知識が深まり、自社製品のブランディングに活かせるでしょう。

ブランディングデザインとは

「ブランディングデザイン」とは、自社ブランドのコンセプトやメッセージをターゲットに視覚的に伝えることです。そもそもブランディングとは、自社ブランドに対する消費者のイメージを作り出すことを指します。ファッション・アパレルブランドの場合は、「カッコいい」「かわいい」「最先端」「サステナブル」などが考えられるでしょう。

ブランディングデザインはさらに踏み込み、ブランドのコンセプトやメッセージを視覚的に訴求するためのものです。これにはブランドのロゴやテーマカラーの選定、Webサイトや広告の構築などさまざまなデザイン業務が含まれます。ブランド全体を統一した世界観のデザインで表現することにより、洗練されたイメージを消費者に伝えられるようになるのです。

ブランディングデザインを実施するうえで、まず検討すべきなのはブランドのコンセプト、すなわち「ありたい姿」とブランディングを行う目的を考えることです。本章では、下記2つの観点からブランディングデザインについて掘り下げていきます。

  • デザインとブランディングデザインの違い
  • ブランディングデザインの主な領域

デザインとブランディングデザインの違い

デザインとブランディングデザインの大きな違いは、「ブランディング」を目的とするかどうかにあります。ブランディングデザインは、ブランドコンセプトに基づいて一貫性あるデザインで世界観を作り、ブランドのニュアンスや雰囲気を伝えることが目的です。

一方で、通常のデザインは情報を視覚化したものを指します。何らかの情報を伝えるという点では同じですが、ブランドコンセプトを伝えてユーザーのイメージを作り出すことは目的にしません。ここが両者の大きな違いです。

ブランディングデザインの主な領域

ひとくちにブランディングデザインといっても、ブランディングデザインが担う主な領域は、下記のようにさまざまです。

  • コンセプト立案とプランニング
  • コンサルティング
  • トータルディレクションとプロデュース

Webデザインや広告デザイン、グラフィックデザインなど多岐にわたることが特徴です。いずれも専門知識が要求される分野であり、ディレクションやコンサルティングのスキルが求められます。したがって、ブランディングデザインは企業の総合力が要求される施策であるといえるでしょう。

ブランディングデザインの重要性

近年では、ブランディングデザインが大きな注目を集めています。ブランディングデザインを実践すると、消費者に競合他社ではなく「自社の商品やサービス」を選んでもらいやすくなるためです。消費者に自社商品を選んでもらうためには、「自社にしかない魅力」をはっきりと認識してもらう必要があります。

インターネットやSNSの発達により、消費者は常に多くの情報を得ています。競合他社が似たようなブランドや商品を展開しているケースも多く、差別化を図ることは容易ではありません。そこで役立つのが、自社ブランドの魅力やコンセプトを、消費者の視覚にアピールできるブランディングデザインです。

視覚情報は文字情報と比べて、さまざまな層に対して強い印象を与えやすく、また記憶に残りやすいこともポイント。文字情報よりも年齢や知識レベルなど個人差の影響を受けづらいため、企業やブランドのコンセプトやメッセージを効果的に伝えることができます。

また、視覚による情報は言語に依存しないため、海外の消費者に対しても正確なイメージを伝えられることが魅力です。文字情報でのブランディングにはどうしても言語の壁が生じますが、ブランディングデザインを実施すれば国境を越えたブランド展開もできるようになります。

ブランディングにおけるデザインの重要な考え方

ブランディングデザインを成功させるためには、ブランドイメージを視覚的な情報で正確に訴えかけることが大切です。前述したように、ブランディングデザインは通常のデザインとは異なり、ブランドの「価値」や「コンセプト」を消費者に伝えることが目的です。

ただお洒落で美しいだけのデザインを作るだけでは不十分。見た目を良くすることだけがデザインではなく、ブランドの価値を伝えることがブランディングデザインで求められます。自社ブランドしか伝えられないメッセージやストーリーを、いかに分かりやすく伝えられるかが大切です。この点を意識して、目的を見失わないようにしましょう。

たとえば、ロゴマークのデザインを考えてみましょう。ロゴマークを差し替えたとき、ほかの企業のデザインとして成立するようであれば、それは正しいブランドデザインではありません。企業やブランドの「らしさ」が反映されていないからです。ブランドの世界観や価値観をうまく表現できているデザインは、企業名を隠していても消費者に「あの企業だ!」と分かるものです。

ブランディングデザインの具体的なやり方とポイント

ブランディングデザインを成功させるためには、自社の現状把握と競合の分析を行い、自社ブランドの価値や強みをデザインに落とし込むことが重要です。本章では、ブランディングデザインの具体的なやり方とポイントについて、下記5つの観点から解説します。

  1. ブランドのコンセプトを明確にする
  2. デザイン作成に必要なキーワードを決める
  3. 企業とユーザーのコンタクトポイントを把握する
  4. デザイナーに依頼してデザインを作成する
  5. スタイルガイドを作成する

ブランドのコンセプトを明確にする

まずはブランドの「コンセプト」を明確化します。自社が目指すブランドコンセプトを定めて、自社の商品・サービスを誰に届けたいか、世の中や社会をどのように変えて、どんな価値を提供したいかを考えてみましょう。たとえば、30代女性のためのファッションを作りたい、持続可能性を追求したブランドを世界に届けたいなどです。

ブランドコンセプトが明確化されていると、自社ブランドの市場における立ち位置も明確になります。類似するブランドコンセプトを持つ競合他社との比較や、分析などを行いやすくなるためです。商品やサービスを購買する主な顧客層を把握して、詳細なマーケティング施策の立案に活かすこともできます。

ポジション分析と合わせて、ターゲット層から持たれている「実際のブランドイメージ」を把握することも重要です。両者が食い違っていると正確なブランディングデザインができません。業界内での立ち位置の分析や、ブランディングデザインの擦り合わせは、これ以降のステップで極めて重要なので、丁寧に行っておくようにしましょう。

デザイン作成に必要なキーワードを決める

ブランディングデザインでは、先ほど設定したブランドイメージを視覚情報で表現するために、「デザイン」に落とし込む必要があります。そのためには「キーワード」の設定が欠かせません。なぜなら、結局のところは「言語情報」がなければ、誰もそのブランドイメージを表現・理解できないからです。

ブランドイメージを言語化することにより、消費者はもちろんのこと社内でも具体的なイメージを共有できます。そのためには、言語化できるレベルまでブランドイメージを簡潔化・具体化して落とし込むことが大切です。

ただし、キーワードが長いと人によって解釈が変わったり、伝達の過程で別のものに変わってしまったりすることがあります。そのため「キャッチフレーズ」のように、短く表現できるものにしましょう。とくに後述するようにデザインの発注段階で、デザイナーに正しく認識してもらうために重要です。

グローバルブランドを目指すなら、翻訳も視野に入れてキーワードを設定しましょう。外国語に翻訳したときに、日本語と同じように明確でインパクトのある表現ができるものがベストです。

企業とユーザーのコンタクトポイントを把握する

企業とユーザーの「コンタクトポイント」を把握することも、ブランディングデザインの重要な工程のひとつです。コンタクトポイントは、企業とユーザーとの「接点」のこと。ユーザーはさまざまな方法で企業やブランドとの接点を持ち、関心と購買意欲を深めていきます。

代表的なコンタクトポイントには、オウンドメディアやSNSアカウント、Web広告や実店舗などが挙げられます。これらすべてについて、デザインを考える必要があります。重要なポイントは「世界観の統一」です。

たとえば、オウンドメディアとSNSアカウントの雰囲気がまったく異なっていると、ユーザーは混乱して購買意欲を失ってしまうかもしれません。すべてのコンタクトポイントを統一して、ユーザーに魅力的な訴求を行いましょう。

デザイナーに依頼してデザインを作成する

キーワードとコンタクトポイントを把握できたら、デザイナーに依頼して実際にブランディングデザインを作成しましょう。優れたデザインを実現するためには、ブランドコンセプトについて、デザイナーに正しく理解してもらうことが重要です。先ほど作成したキーワードを基に、色彩やフォント、画像などのデザイン要素のすり合わせを行いましょう。

簡潔で分かりやすいキーワードを設定することがベストですが、言葉だけではどうしても伝わりづらいことがあります。イメージの認識に齟齬があると大きな問題になるため、参考となる素材集やWebサイトなどを準備して、入念な擦り合わせを行うのも効果的です。

スタイルガイドを作成する

以上で基本的なブランディングイメージの作成は完了ですが、より効果的なブランディングデザインを行うためには、「スタイルガイド」を作成しておくことをおすすめします。スタイルガイドとは簡単に言うと、社内や外注先で正確なブランドイメージを認識するための「ルールブック」のこと。

前述したように、ブランディングデザインを効果的に行うためには、常に「一貫性」を保つ必要があります。デザインとキーワードが一致していなかったり、コンタクトポイントごとにデザインが違っていたりすると、ターゲットとなる顧客すべてに同じイメージを与えることができません。

とくにデザイン業務を外部に発注する場合は、認識を共有しづらいことがあります。ブランディングデザインのマニュアルの役割を果たすスタイルガイドを作成しておくと、あらゆるブランディングデザインを統一させやすくなり、より優れた成果を得られるでしょう。

企業のブランディングデザインの成功事例

ブランディングデザインを実施した企業が、どのような施策を行ったのかについて、下記5社の成功事例を本章で紹介します。

  1. スターバックス
  2. 今治タオル
  3. 明治製菓
  4. B.LEAGUE
  5. スノーピーク

スターバックス

ブランディングデザイン_スターバックス
引用元:スターバックス

スターバックス」は、ブランディングデザインの評価がとくに高い企業のひとつです。スターバックスの会長兼社長兼CEOのハワード・シュルツは、「スターバックスはコーヒーではなく体験を売っているのだ」と述べたように、スターバックスは「体験デザイン」でブランドイメージを作り上げた代表的な企業です。

そんなスターバックスのロゴは、希臘神話に登場する「セイレーン」をモチーフにした人魚のようなデザインになっています。セイレーンの神話は、その甘美な歌声で船乗りたちを魅了したというもの。コーヒーで顧客を魅了したいという、明確なブランドコンセプトを表現しているのでしょう。

スターバックスはこれまで日本では馴染みのなかった、新たな文化を持ち込んだことでも注目を集めました。たとえば、コーヒーのサイズが通常の「S・M・L」ではなく「ショート・トール・グランデ」という区分であることや、コーヒー豆の種類ではなくラテやエスプレッソなど飲み方で選ぶことなどです。会計後に「ランプ」の下で注文を待つことも新たな文化でした。こうした体験デザインがスターバックスの魅力です。

また、スターバックスには「スターバックス リージョナル ランドマーク ストア」と呼ばれる、各地域の象徴となる場所に作られた特別な店舗があります。たとえば、まるで公園に浮かび上がるように映えることが印象的な「富山環水公園店」や、周辺にさまざまな美しい花々が咲き誇る「Starbucks御成町店」、太宰府の伝統と現代性が融合した釘を使わない「太宰府天満宮表参道店」などです。

訪れる人々が地域の歴史や伝統、文化や自然の美しさを再発見して、地域との絆を育むことができるのも、スターバックスのブランディングデザインの特徴だといえるでしょう。

今治タオル

ブランディングデザイン_今治タオル
引用元:今治タオル

愛媛県のタオルメーカー「今治タオル」は、2006年ごろに深刻な経営危機に陥りました。安価な外国産タオルに市場を奪われて、価格競争に勝てなくなってしまったためです。そこで同社は価格ではなく「品質」をアピールするブランドコンセプトを打ち出しました。

今治タオルのロゴマークは、赤・白・青の3色から成るシンプルなものです。しかし、そのシンプルなデザインのなかで、赤は「日本の日の丸」、白は「清潔感と柔らかさ」、そして青は「信頼と落ち着き」の象徴となっています。一度聞いたら忘れることがない、非常に明確で分かりやすいブランドデザインですね。

自社の強みを前面に押し出した効果的なブランディングデザイン戦略により、今治タオルは今や日本製品の品質と信頼性を象徴するような、素晴らしいブランドとしての価値を確立したのです。なお、『今治タオル 奇跡の復活 起死回生のブランド戦略』という書籍には、あたかもドキュメンタリーのように、ブランド再生の過程が克明に描かれています。自社ブランドの地位を確立したい人は、ぜひ参考にしてみるといいでしょう。

明治製菓

ブランディングデザイン_明治製菓
引用元:明治製菓

明治製菓」は明治製菓と明治乳業の統合を背景に、2009年の4月1日にロゴデザインを刷新しました。大きな特徴は、これまで「MEIJI」と大文字表記だったものを、「Meiji」という小文字表示に変えたこと。全体的に丸みを帯びたデザインになっているため、牛乳の温かく柔らかいイメージを表現できます。さらに「iji」は人が寄り添っている様子を想起させ、飲むと安心できるような情景が伝わってきます。

これが明治製菓がユーザーに伝えたかった企業理念、ブランドイメージです。明治製菓の企業理念は『「おいしさ・楽しさ」の世界を拡げ、 「健康・安心」への期待に応えてゆく』というもの。このロゴデザインを見ると、まさにその内容を体現しているといえるでしょう。明治製菓のロゴデザイン、ブランディングデザインの成果は、企業のブランドコンセプトを体現することに成功したモデルケースです。

B.LEAGUE

ブランディングデザイン_B.LEAGUE
引用元:B.LEAGUE

B.LEAGUE」は、日本のプロバスケットボールのトップリーグです。B.LEAGUEのマーケティング戦略において、とくに注目すべき点は下記3つです。

メインターゲットを若者や女性としてアプローチする
スマホをターゲットにした情報発信を積極的に行う
スポーツファンでなくても楽しめるエンターテイメント性

野球やサッカーなどほかのメジャースポーツとは異なり、バスケットボールは男女の競技人口がほぼ半々であることが特徴です。また、情報の発信力が高い若者をメインターゲットとすることで、集客力も高めています。コアターゲットの若者の利用率が高いSNSを活用するために、スマホ向けの情報発信戦略も行っています。

さらに、スポーツでなくても楽しめるようにエンターテイメント性を追求したことも、B.LEAGUEが絶大な人気を誇っている理由です。B.LEAGUEの成功事例は、ブランディングデザインを打ち立てるために必要な、ターゲティングとポジショニングのモデルケースだといえるでしょう。

スノーピーク

ブランディングデザイン_スノーピーク
引用元:スノーピーク

スノーピーク」は、「キャンプ」の持つ本質的な価値を広めるために、効果的なブランディングデザインを展開しました。同社はハイエンドなキャンプ用品を販売するブランドとして認知を高めています。しかし、国内のオートキャンプ人口は全体の約6~7%に留まっており、集客力の向上に限界を感じていました。

そこで同社は、「人と自然、そして人と人をつなげることで人間性を回復する」というミッションを確立しました。これはむしろ、キャンプをやらない人にこそ必要なこと。「人生に、野遊びを。」というキャッチフレーズを創出して、より幅広いターゲット層へ「野遊び」を展開しました。

Webサイト制作やグラフィック、撮影Webなどすべてのデザインを社内デザイナーが担当しているため、あらゆる点で世界観の統一が行われていることもポイントです。こうしたブランディングデザインにより、2018年12月期の売上高は120億円と過去最高を更新。現在も成長を続けており、こうしたブランディングデザインの代表的な成功事例だといえるでしょう。

ブランディングデザインは企業にとって重要なアウトプット

消費者がさまざまな手段で情報を入手する現代において、ブランディングデザインは企業にとって極めて重要な施策となりました。ブランディングデザインを正しく取り入れることにより、自社ブランドの魅力を消費者に分かりやすくアピールして、競合他社との差別化を図ることができます。

ブランディングデザインを行うときは、まずブランドコンセプトを明確化して、簡潔なキーワードに落とし込みます。ユーザーとのコンタクトポイントを把握して、そのすべての世界観を統一させるようにしましょう。今回紹介した成功事例は、あらゆる業界や分野のブランディング戦略に役立つので、ぜひ参考にしてみてください。

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