FEATURE 2023.03.03

オンラインショップから実店舗、移動式本屋まで。新規事業にチャレンジし続けることで生まれる好循環。 ーバリューブックス取締役副社長・中村和義 

長野県上田市にある古本買取・販売バリューブックス。ここには毎日2万冊以上もの古本が送られてくると、副社長の中村和義さんは言います。その古本が次の持ち主の手に渡るまでの接点はオンラインショップや上田市内にある実店舗「本と茶 NABO」、そして移動式本屋「BOOK BUS」など様々。バリューブックスが業態を広げながら古本を生活者と繋ぎ続ける理由について迫りました。

ーーオンライン上での古本買取・販売サービスや、実店舗である本屋「本と茶 NABO」、無印良品の中で展開されている「MUJI BOOKS」との協業など様々な活動をしているバリューブックスですが、立ち上げの経緯は何だったのでしょうか。

中村

 

 創業者の中村大樹が大学を卒業して何か自分にできることがないかと模索している時に、家にある本をamazonに出品してみたそうなんです。そうしたら、意外にすぐに売れたことに商機を感じ、古書店で仕入れた本をamazonで販売し、その差額を利益にする、いわゆる「せどり」を1人で始めたと言います。その後“せどり”での売上がどんどん伸びていき次第に仲間も増えたことで、会社を法人化しました。その後、せどりからの脱却のため、インターネットを活用し、本の宅配買取ができるサービス「VALUE BOOKS」を独自で開設しました。

 

 現在、バリューブックスには毎日2万冊もの古本が届きます。そのうちの半分は、インターネットでの販売を通じて次の読み手に届くのですが、残りの半分の1万冊は、古紙回収にまわってしまっている。そうした本は、「book gift project」で小学校や保育園に寄贈したり、「VALUE BOOKS Lab」という、専門の実店舗で安価で再販売、「古紙になるはずだった本」として無印良品が手掛ける「MUJI BOOKS」で取り扱ってもらうなど、できるだけ本は本の形のまま次の読み手にお届けしたいと思っています。それでも、古紙回収に回ってしまう本は大半を締めていて、何か有効活用できないのかと考えた結果、それらの本から再生紙を作り、その紙を使って「本だったノート」という商品を開発しました。こうして、より多くの本を循環させる仕組みを模索しているんです。

 

ーーオンライン上での古本の買取・販売以外にも実店舗「本と茶 NABO」や「MUJI BOOKS」との協業、移動式本屋の「BOOK BUS」など多種多様な活動をしているバリューブックスですが、事業を拡大する上で軸となっていることはありますか。

中村

 あくまでも僕たちの本業は古本の買取・販売なので、新規事業が本業の促進になるかどうかの見極めには力を注いでいます。お客様が送って下さった本をどう活用したら本業に繋がるかどうか常に考えていますね。例えば、オンラインで販売するだけでなく、実店舗「本と茶 NABO」や移動式書店の「BOOK BUS」などのリアルな場所での販売もしていくことで、自分が手放した本がどこで・どういう風に売られているか想像しやすい。買取ができない本もただ捨てるのではなく、小学校や保育園に寄贈したり、無印良品で取り扱ってもらったり、ノートとして再利用するなど、手放してもらった本を極力有効活用していくことが、お客様も気持ちよく本を売れることにつながるのではないかと思っています。

 

実際にお客様に行ったアンケートでは、「なぜ本の売り先としてバリューブックスを選びましたか」という問いに対して「本を有効活用しているから」という回答を多くいただきました。僕たちの多岐にわたる取り組みが人々に伝わり、本業である古本買取・販売に繋がっていると感じますね。

ーー創業当初は数人のチームで始め、今では300人以上もの規模で活動しているバリューブックス。どういった経緯で事業が拡大していったのでしょう。

中村

 本を買う人は本を売る人でもあると考え、amazonや楽天で本を買うお客様にバリューブックスのチラシを封入させてもらったんです。何十種類もクリエイティブを試し、「どうしたら反応率が伸びるか」と地道にテストを繰り返していました。その結果、反応率が10倍にもなったケースも。

そういった地道なマーケティングを行うことに付け加え、情緒的な部分がエンジンとなりビジネスがプラスになる好循環が生まれたのかなと思います。

ーー今後バリューブックスで挑戦したい取り組みはありますか。

中村

 今までは本の買取件数を伸ばすために力を注いでいて、本の販売はamazonや楽天などのプラットフォームに頼っていました。しかし2年前に本の自社販売サービスを立ち上げたのをきっかけに、本を売ったり、買ったり、蔵書管理をしたりと、本の総合サービスとして利用できるようになったので、今後はそこをもっと伸ばしていきたいです。

 自分達のプラットフォームの中で、本の買取・販売の両方をしっかり回せるようになれば、手数料がかからない分、今まで以上にサービスを強化しやすくなる。そのためには、これからも、本が好きな人、本に携わる人にとってバリューブックスが最適なサービスとなるような仕組みを模索し続けていきたいと思います。

写真:倉島水生

※コロナウイルス感染拡大防止対策を施したうえでインタビューを行い、撮影時のみマスクを外しております。

※コロナウイルス感染拡大防止対策を施したうえでインタビューを行い、撮影時のみマスクを外しております。