奥山:小篠さんのファッション遍歴を教えていただけますか?
小篠ゆま(以下、小篠):ご存知のように私はファッション一家(母親はデザイナーのコシノヒロコさん)に育ちまして、物心がついた頃から洋服に囲まれていました。中学生ぐらいから家のクローゼットの中をあさって、取っ替え引っ替えずっとファッションショーをしていましたね。結果的に実はコレでコーディネート力が付いた気がするんですが……。親がデザイン画を描いている隣でお絵描きをしていたり、昔は家に縫い子さんもいたので、ミシンの下に落ちている端切れを縫い合わせてぬいぐるみの服を作ったり、小さい頃からモノ作りが好きだったんですね。ただあまりにもその道一辺倒だったので、プレス業とかモデルとかスタイリストとかファッションの世界の他の部分もいろいろとやってみましたが、結局コレクションの服を作っている時が一番楽しかったんです。それ以降はもう一生の仕事にすることに決めましたね。
奥山:やはり血筋ですね(笑)。小篠さんのコレクションは、今元気なアラフォー世代から特に支持をされていますよね?
小篠:私自身もそうだし、周りもそうだけれど、とにかく女性は皆元気で、実際何かしら動いているんですよ。最近はアクティブでポジティブな男前な女性が増えているでしょ。私自身が必要なものや欲しいなと思うものを作っているとおのずと消費者ニーズとマッチするんですね。女性たちが考えるこんなものをあったらいいな、と思うちょっとわがままでお洒落なアイテムを商品化しているからでしょうね。
奥山:実際ご自身も働く女性として、そしてお子さんをお持ちの母親として多忙かと思うのですが。
小篠:やっぱり頑張っている女性は魅力的だし、私自身も憧れています。仕事と家庭でフル回転していますが、それこそが充実したライフスタイルの原動力になっています。私の周りのお友達やブランドのお客様もそういった方が多いですよね。多忙の合間にウチのショップに駆け込んできて洋服をお買い上げになったり、話題のレストランに行ったり、ヴァカンスに出掛けたりしているんですよね。私も旅行が大好きなので、子供が生まれる前はちょくちょく海外にダイビングなどにも出掛けていました。ホテル巡りも趣味なんですよ。国内ではハイアットリージェンシー京都が好きで、支配人の横山さんの仕事ぶりと人間性が素晴らしくて尊敬しています。ホテルホスピタリティって我々の仕事にも非常に参考になる部分ですからね。
奥山:なるほど。ちなみにファッションの世界で小篠さんが気になる人っていますか?
小篠:マーク ジェイコブスかな。この人ってバランスが本当に良いと思います。デザイナーとしてのクリエーションをしっかりしながら、ビジネス目線を忘れていないんです。しかも男性のデザイナーなのに女性心をよく解っているというか……、頭で考えるというよりはお腹でクリエーションしているカンジなんですね。ちょっと可愛くてしかもカッコいいってことを上手く表現していると思います。やっぱりアメリカ人でありながらフランスのルイ・ヴィトンで仕事をして成功したことが大きいんだと思いますよ。
奥山:なるほど。小篠さんご自身もパリやロンドンでお仕事をされていましたが、何か感じられることってありますか?
小篠:若い頃にグローバリズムの本質を肌で感じられたのは大きいですね。ファッションの世界では、欧米は始めから世界が相手ですが、日本はまず国内で成功してから、次に海外に出て行かなければなりません。それってやっぱり大変なんですよ。しかも日本は、政財界ともにまだまだ未成熟だと思います。なかでもアパレル業界は仕事のやり方などまだまだ旧態然としている気がします。今の時代ファッション業界だけは特別なんて甘えは許されないでしょ。考え方としてはよっぽどビジネススタンスが確立されたユニクロのほうが普通のはず。消費者に対してもっと近い目線でいないとダメですよね。ただ不況と言われている今って、実はチャンスだと思うんですよ。コンペティターも少ないですから、ちょっとプロモーションすればすごく目立てますからね。 それと業界の活性化のためにも、海外のようにインターン制度を取り入れると良いと思っています。ファッションの世界に飛び込みたいと思っている若い学生たちにも希望を与えられるし、自分の適正も判断しやすいはず。企業も先行投資だけれど結果的にミスマッチもなくなりメリットも大きいと思いますよ。
奥山:さて今回2010SSのYUMA KOSHINOの東京コレクションはどういったテーマなんでしょうか?
小篠:200年前ぐらい中南米の様な環境の、とある王国のお姫様とその周りの環境を表現したいと思ってクリエーションしました。土着的だけど貴族らしさを感じさせるコレクションです。実はシーンごとの童話を書こうかなぁとも思っているんですが……構想中です。都会のリゾートスタイルをテーマに、ちょっとアプローチを変えたエレガントなエスニックを提案しています。
奥山:最後になるのですが、ファッションビジネスに関わる人へのメッセージを頂けますか?
小篠:世の中の動きをしっかり肌で感じて、きちんと受け止めることが非常に重要です。紙の上だけのデザインじゃなく、社会の状況や背景、ビジネスの観点、すべてを自分の中で咀嚼することが大切。そのためにもバランスよくたくさんの経験をするための行動力が必要です。たくさんのいいことを聞いたり、素晴らしいものを見たりすることで自分自身の貯蓄を増やしていけば、周りがどんな状況でも怖いものなんてないはずです。不況なんて言われてますけど、良いエネルギーを発信していければ全然ヘッチャラですよ。

- 「YUMA KOSHINO」デザイナー
小篠ゆま(コシノユマ) - 文化服装学院装飾研究科卒業後、1991年フランスに渡り高田賢三氏のアトリエで研修。ミチコジャパンロンドンスタジオ、ヒロココシノデザインオフィスなどを経て、1998年「ユマ コシノ」を東京コレクションに発表。現在では企業やホテルのユニフォームやウエディングドレスなども手掛けている。













