奥山:植田さんのファッション遍歴を教えていただけますか?
植田みずき(以下植田):自分の意志で洋服を買い始めたのは、中学生の頃でした。最初はサーフガールの様な格好に憧れて、雑誌の『Fine』などを読んでいました。その後、一転してキレイめの波が押し寄せて、“アムラーブーム”でスーツを着たりしていましたね。そしてウエスタンブームになって、19歳の時に『moussy』で働き始め、その頃はいわゆるアメカジ・スタイルでしたね。その後もロックだったりセクシーだったり、スーパーモデル風カジュアルだったり……と、その時の興味や流行にあわせて、ぐるぐるとスタイルが変わっていました。
奥山:めまぐるしいですねぇ。そんな中でも特に思い出のファッションアイテムってありますか?
植田:先ほどのウエスタンブームの頃にデニムに興味を持ち出して、『moussy』でデニム担当になってから、始めて服自体をしっかりと勉強しました。デニムの本を読んだり、当時のオーナーがデニムマニアだったので、ヴィンテージものを見せてもらったり……。ステッチの仕様などディテールをかなり研究しましたね。『moussy』ではベーシックなデザインのデニムを作っていましたが、『SLY』が独立した時に、ダメージ加工や塩素加工にトライしました。工場にまで足を運んで、いろいろと相談して作り込んでいた事もありで、その頃のデニムには今でも愛着があって、大事に持っていますね。今『SLY』ではヴィンテージ加工をベースに20型もバリエーションを広げています。来シーズンのショートパンツもいろいろタイプが揃っていておすすめです。
奥山:楽しみですね。『SLY』を立ち上げた、そもそもの経緯を教えてもらえますか?
植田:『moussy』のデザイナーをしていた時に、ハード&セクシーなものがやりたくなって……それでデザイン性が新しく、また面白そうだから独立したラインでやってみたらということになって、5型ぐらいから始めました。そしたら実売に繋がり、2001年に独立したブランドとして『SLY』が立ち上がりました。バイカーやロック、ミリタリー、ハードでセクシー……、そんなキーワードで服作りをしてきて、2010年で10周年になります。ちょうどひと回りしてきた所で、原点の『SLY』らしさを見つめ直そうと思っています。この10年間でいろいろな新しいエッセンスを吸収して戻ってきましたから。始めは自分の着たいものや好きなものをデザインしていましたが、今ではお客様が何を求めているか? そして実売に繋がる事を意識してデザインしています。自分目線だけでなく、もっと広い視野でブランドを見られるようになったと思います。
奥山:ちょっと話が変わりますが、植田さんお子さんが生まれて変わられたことありますか?
植田:子供が生まれるまでは、ずっと仕事のことばかりでしたね。今は1歳になる息子がいるんですが、仕事を早く切り上げて子供と過ごす時間を大切にしたいので、時間の配分をキッチリと考えるようになりましたね。そのことで逆に生活にメリハリができて、いいサイクルになりました。それといい意味でスタッフを頼るようになった事で周りも成長するようになり、人のマネージメントが出来る様になりました。今は仕事を家に持って帰って、子供を寝かしつけたら、デザインをするような生活ですが、旦那さんに手伝ってもらったりしてこなしています。最初はなんでも完璧にしなくてはと思って、育児書を読み込んで張り切っていましたが、子育てって本当に大変。それでネガティブになってしまうぐらいなら……と思って、育児書を閉じたらラクになりましたね。
奥山:植田さんのデザインも変わりましたか?
植田:ブランドイメージがあるので大きくは変わらないのですが、より機能性やシルエットを重視したデザインを提案するようになりました。それと子供が生まれた事で『SLY KIDS』のデザインが自然と思い付くようになりました。キッズラインは大人アイテムをそのまま小さくしたようなデザインですが、子供の日常着をカラーリングやポップな柄などを使ってデザインしています。私の周りは今ベビーブームで、子供をだっこする時に“フラットシューズ”が必須ですが、可愛いものがない。という声が多かったので『SLY』で作ってみました。それと男の子の服って、Tシャツか短パンが多くて買いたい服があまりないので、『SLY KIDS』ではユニセックス対応で着られるように2色展開しています。今後はベビー服も作りたいです。
奥山:植田さんが最近気になっているモノ&ヒトってなんですか?
植田:アイテムとしては、今つけてる『トム・ビンズ』のアクセサリー。エレガントとパンクがミックスされいてお気に入りです。ヒトはユニクロ社長の柳井 正さん。ちょうど柳井さんの『成功は1日で捨て去れ』を読んでいるところです。最近ビジネス書を読むようになりました。経営者としての根本的な考え方が非常に勉強になりますね。小さなことで悩まず、明日からも頑張ろう!って気にさせてくれますね。
奥山:植田さんは販売員からブランドのプロデューサーになられた訳ですけど、何か意識されていましたか?
植田:もともとはデザイナーになりたい、とは思っていませんでした。始めはアルバイトとして入って、社員になって、店長に……と、いつでも自分の置かれた場所で手の届く範囲のトップになりたいとは思っていました。そうでないとなかなか自分の想いを伝えられないから。それで一つ一つステップアップしていき、求められていることに応えてきました。今は現実的な子が多くて、ちょっとアピールする部分が少ないかなぁ、と感じています。
奥山:最後になるのですが、ファッションビジネスに関わる人へのメッセージを頂けますか?
植田:ファッションビジネスは、ただ好きなだけでは当然成り立たないと思います。でも、その気持ちを強く持っていないとやっていけない、とも思います。仕事をしていると、もどかしさや葛藤がありますが、自身の信念の核を忘れずに頑張ることが大切ですね。そして常に変化して、進化していくことです。みんなで頑張りましょう!

- SLYクリエイティブ ディレクター
植田みずき(ウエダミズキ) - 1980年生まれ。アパレルブランドでショップ店員として勤務した後、1999年『moussy』のブランド立ち上げに参加し、アシスタントデザイナーを担当。2000年秋に『moussy』内の1ラインとして『SLY』が誕生。2001年に『SLY』がブランドとして独立し、クリエイティブ ディレクターとして活躍、オンリーショップもオープンする。現在では、『HOTEL SLY』で子供服のデザインも担当している。













